大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和59年(ワ)2498号 判決 1987年8月11日

原告 甲野花子

右訴訟代理人弁護士 杉島勇

同 杉島元

昭和五九年(ワ)第二四九八号事件被告 加藤つる

昭和六〇年(ワ)第一九九号 事件被告 京都市地域連合婦人会

右代表者会長 加藤つる

右両名訴訟代理人弁護士 坂井尚美

同 川口善秀

主文

一  原告の被告京都市地域連合婦人会に対する除名処分無効確認の訴えを却下する。

二  原告の同被告に対するその余の請求及び被告加藤つるに対する請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、京都新聞朝刊社会面突出、四糎×2段(活字の大きさは一倍活字)に別紙謝罪文を広告せよ。

2  被告京都市地域連合婦人会と原告との間において、同被告が原告に対し原告の京都市地域連合婦人会の常任委員を昭和五九年一一月三〇日に除名処分としたのは無効であることを確認する。

3  被告らは、原告に対し、各自金一〇〇万円を支払え。

4  訴訟費用は当該事件被告の各負担とする。

5  第三項につき仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、昭和五九年三月一九日京都市北区連合婦人会(以下「北区婦人会」という。)の総意に基づき同会々長に選任されたものである。

被告京都市地域連合婦人会(以上「被告婦人会」という。)は、京都市の各行政区の地域連合婦人会によって構成され、その地域連合婦人会は各行政区内の学区婦人会によって構成され、被告加藤は、被告婦人会の会長である。

2  被告婦人会は、原告に対し、昭和五九年一一月三〇日、原告の被告婦人会の常任委員を除名する旨の処分(以下「本件除名処分」という。)をなした。

3  本件除名処分は、その除名事由を欠き、かつ、常任委員会において何人にも発言審議の機会を与えなかったものでその手続に瑕疵があり、無効である。

4  被告加藤は、被告婦人会々長名をもって、原告を除名した旨を表示した文書(甲第一号証、以下「本件文書」という。)を京都市各地域婦人会、北区市政協力委員会、北区体育振興会、北区文化協議会等に殊更発送し、原告が数十年間にわたる真摯な婦人活動ないし社会的活動によって高く評価され、尊敬されて来た名誉と信用ないし人権を著しく毀損された。

5  被告加藤の本件文書流布行為は、故意に基づく原告の名誉、信用、人権の毀損を意図する不法行為であり、被告婦人会も、被告加藤が会長としなした右不法行為により原告に与えた損害を賠償すべき責任を負うものである。

6  よって、原告は、被告婦人会に対し、本件除名処分の無効確認を求めるとともに、被告らに対し、原告の名誉回復のための措置として請求の趣旨第一項記載のとおりの謝罪広告の掲載及び右精神的苦痛に対する慰謝料として各自一〇〇万円の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2の各事実は認める。

2  同3の事実は否認する。

3  同4のうち、被告加藤が被告婦人会々長名をもって、原告主張の文書をその主張の団体等宛に発送したことは認めるが、その余の事実は否認する。

4  同5、6は争う。

三  被告らの主張

1  本件除名処分の除名事由は、次のとおりである。

(一) 原告は、かねてより北区婦人会を私物化し、昭和五七年三月二七日一旦同会を被告婦人会から脱退させて、上部団体たる被告婦人会の統制を乱し、著しくその名誉を傷つけた。即ち、原告は、常に自己の利益を念頭において組織を動かし、何事につけても独善的な行動を続けてきたものである。

(二) 原告は、日頃から被告婦人会は単なる連絡組織に過ぎないから、各婦人会はその拘束を受けることはない旨広言し、被告婦人会の規約を無視する態度を取り続けていた。この事実は、原告が、昭和五七年七月八日になって、被告婦人会を誹謗中傷し、その社会的評価を著しく毀損して被告婦人会の発展を妨害し名誉を傷つけた「御あいさつ」と題する書面(乙第二号証、以下「本件挨拶状」という。)を各婦人会のみならず各関係方面に率先して配布したことによって決定的に明らかになった。

(1) 被告婦人会は、昭和五〇年度の国際婦人年の基調テーマであった平等、発展、平和への学習に力点を置いて、昭和五三年秋から婦人問題学習に取組をはじめたが、その基本は会員意識の向上ないし改革であり、このことは被告婦人会の存在目的たる婦人の地位向上の趣旨にも合致するものであった。

(2) しかるに、原告は、本件挨拶状の中で、次のとおり事実無根の事実を指摘して中傷し、被告婦人会の名誉を著しく毀損させた。

ア ここ三年有余の間、京都市社会教育課や地連協(被告婦人会の昭和五七年六月七日規約改正前の略称である。)から出る方針は各学区や町の現状と伝統を無視した偏向的なものである。

イ 之を極端に論ずれば、エンゲルスの「家族私有財産及び国家の起源」やオーグスト・ベーベルの「婦人論」を部分的に具体化した様な研修に多数の会員を動員して「理論武装」を行うというものである。

ウ しかもこの方針を理解できぬ発言やその発言者を出した地域団体がただちに大衆の前で批判され、或は、その指導者を叱責更迭する。

エ この運動発足以来地域婦人会相互のたのしい団結にゆるみが生じ、いまや会員の中にごうごうたる非難が起り、家庭生活まで破壊するという心配すら出て来た。

2  本件除名処分は、昭和五九年一一月三〇日開催の常任委員会において、議案として提出され、委員定数合計三三名のうち半数を超える出席委員数二七名全員の賛成により承認可決されたものであって、手続的にも適法である。

3  被告婦人会が各婦人会に本件文書を配布したのは、被告婦人会が各婦人会を傘下においた連合体であり、各婦人会相互の連絡調整を図るとともに、幹事会、常任委員会等を通じて、各婦人会に対し、勧告、指導、助言等を行っている上部団体であるため、除名の事実を周知、徹底させるためである。

4  被告婦人会が各婦人会のほかは、北区長、北区各種団体、市政協力委員連絡協議会々長等合計二九名に対して本件文書を配布したのであるが、いずれもその事務や事業遂行にあたって、被告と密接な協力提携が不可欠であるので、これらにも除名の事実を知らせる必要があったためである。

四  被告らの主張に対する認否及び原告の反論

1  被告らの主張1について

(一) (一)のうち、北区婦人会が昭和五七年三月二七日被告婦人会から脱退したことは認めるが、その余の事実は否認する。右脱退は、原告個人の行動でなく、北区婦人会の総意に基づくものであり、かかる事態を発生せしめたのは、いずれも被告加藤の専横な会務運営に端を発するものである。

(二) (二)のうち、北区婦人会が本件挨拶状を配布したことは認めるが、その余の事実は否認する。本件挨拶状は、衣笠学区婦人会々長木俣茂子の夫で市会議員木俣秋水が執筆し、木俣茂子も署名の一人であり、北区婦人会の総意によってなしたものである。

2  同2の事実は否認する。

3  同3、4は争う。

4  北区婦人会の被告婦人会からの脱退、本件挨拶状の作成及び配布は、北区婦人会の総意によって行われたものであるところ、その後、昭和五七年一〇月一日、北区婦人会は被告婦人会に復帰し、一切は解消し、本件除名処分は故なきものである。

五  原告の反論に対する認否及び被告らの反駁

1  原告の反論(前記四の4)のうち、北区婦人会がその主張の日に被告婦人会に復帰したことは認めるが、その余の事実は否認する。

2(一)  被告婦人会は、北区婦人会の復帰を認めたものの、責任者である原告については一定の処分が必要であることが確認され、当面その処遇については被告加藤預りとすることが決定され、このことは、同被告から同年一〇月一六日開催の常任委員会の席上で原告に伝え、原告の昭和五九年三月末日の常任委員任期満了まで原告が反省するかどうかを見守ることにした。

(二) ところが、その後も原告個人の行動には被告婦人会傘下の婦人会代表者としての反省が全然見られなかったので、昭和五九年三月の役員改選期を前にして、被告婦人会は、原告の除名処分をしようとしたが、その直前の同年二月二五日、前北区長冨部修から、原告は自発的に北区婦人会長を辞任するから少し待って欲しい旨の申入れを受けたので、除名処分を見合せていた。

(三) しかるに、原告は、新年度に入って再び北区婦人会々長に選任されるや、自らの辞任意思を翻した。

そこで、被告婦人会は、同年五月一日、七月四日、七月二六日、八月一八日、九月一四日、一〇月一五日、一一月一〇日に開催された各常任委員会の席上被告加藤から原告の常任委員除名の確認とともに、原告は北区婦人会々長として適任でないから速やかに後任会長を選出されたい旨を強く要望したが、これを放置しているので、被告婦人会としての正当な会活動を維持達成するため止むなく本件除名処分をなしたものである。

六  被告らの反駁に対する認否

被告らの反駁(前記五の2)のうち、原告の処遇については被告加藤会長預りとすることが決定されたとの事実は知らない、その余の事実はすべて否認する。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1(当事者の地位)、2(本件除名処分の存在)の各事実は、当事者間に争いがない。

二  ところで、原告は、被告婦人会に対し、本件除名処分には実体的にも、また、手続的にも瑕疵があり、無効であることの確認を求める訴えを提起しているが、右訴えは、被告婦人会が昭和五九年一一月三〇日原告にたいしてなした本件除名処分の無効確認、換言すれば過去の法律事実の効力のないことの確認を求めるものであることは、原告の主張自体に徴して明らかであり、現在の権利又は法律関係の存否の確認の主張とはいえず、確認の対象として許されない(権利保護の資格を欠く)ものであって不適法として却下を免れない。仮に便宜右訴えを本件除名処分の無効を前提とする被告婦人会の常任委員としての地位の確認を求める趣旨の訴えと理解するも、これまた、確認の対象となるべき適格を欠くものとして却下を免れないこと、次項2に示すとおりである。

三  原告は、本件除名処分が無効であることを前提に被告らに対し不法行為による損害賠償請求権に基づき謝罪広告の掲載及び慰藉料の支払を求め、本件除名処分の効力が争われているので、まず、本件除名処分について司法審査の対象とすることの可否について検討する。

1  《証拠省略》によれば、被告婦人会は、規約を有し、名称を「京都市地域連合婦人会」(昭和五七年六月七日規約改正前は「京都市地域婦人会連絡協議会」)と称し、事務所を頭書被告婦人会肩書所在地に置き、京都市の各行政区(一一区)地域連合婦人会を傘下におき、相互の連絡調整並びにその発展を図り、婦人の地位の向上を期することを目的とする右各行政区地域婦人会の連合体であり、また、右各行政区地域連合婦人会は各行政区の学区地域婦人会(当該小学校区地域内婦人を会員として構成する。)の連合体であること、被告婦人会は、右目的を達成するため、婦人問題を解決するための諸種の施策、婦人の生活周期の変化に伴う諸種の施策、社会教育の普及徹底並びに社会福祉事業、会員相互の福祉増進のための事業等を行っていること、被告婦人会は、合議体として、幹事会(緊急議決を要する場合には、幹事会をもって常任委員会に代行することができる。)、常任委員会(会の予算、決算、規約の改廃、目的達成のための事業に関することを協議する。)、特別委員会(会の活動に特別の必要あるとき、常任委員会の議決により設置し、協議事項はすみやかに次回常任委員会に報告し、承認を得るものとする。)を設置し、幹事会は各行政区の会長をもって、常任委員会は常任委員をもってそれぞれ構成され、常任委員は各行政区地域連合婦人会において選出された会長、副会長の二名の計三名をもってこれにあて、特別委員会の委員は常任委員及び特別研究員の中から選出され、常任委員会は各行政区一名以上出席し、委員定数(三三名)の半数以上により成立し、協議は多数決により決する定めであったこと、総会は年一回これを開き、必要に応じて臨時総会を開いていたこと、被告婦人会には、役員として、会長、副会長、庶務、会計が置かれ、役員は幹事の内から常任委員が選出し、その任期は常任委員のそれと同様二年とされていること、会長は被告婦人会を代表して会務を総括すること、被告婦人会の経費は、各行政区地域連合婦人会の分担金、寄付金及び各種事業益金をもって賄われ、その会計年度は毎年五月一日に始まり、翌年四月三〇日に終ること、常任委員が被告婦人会の名誉を傷つけた場合には、被告婦人会は、常任委員会の協議の上、常任委員を除名することができる、しかし、除名された常任委員は、選出母体である各行政区地域連合婦人会の会長又は副会長の地位を喪失するものではない(なお、除名された常任委員の補充については規約にその定めはない。)ことが認められ(る。)《証拠判断省略》

右認定事実によれば、被告婦人会は、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定しているものというべきであるから、いわゆる権利能力のない社団であると認めるのが相当である。

2  ところで、被告婦人会は、いわゆる権利能力のない社団とはいえ、右認定のとおり、地域婦人団体の自主的、民主的な組織として、その目的を達成するに必要な活動、組織運営は規約上も常任委員を最高の意思決定機関として各種合議体の協議の上に成り立ってるものであるから、規約の存否にかかわらず、自らの組織運営について自治権ないし自律権を有し、構成員を規律する包括的権能があり、常任委員の除名については規約上制裁規定があるのでそれに従って制裁をしなければならないと解すべきである。

しかして、被告婦人会がなした制裁処分に関する紛争は、本来、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、被告婦人会の団体内部の自主的、自律的な解決に任せるのが適当であって、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが相当である。

これを本件についてみるに、被告婦人会がなした本件除名処分に関する紛争は、被告婦人会内部の合議体である常任委員会を構成する常任委員の地位の存否に関するものであって、その処分の性質自体に照らし一般市民法秩序と直接の関係を有するものとは考えられないので、被告婦人会の団体内部の自主的、自律的な解決に委ねるのを適当とし、裁判所の司法審査の対象にならないといわねばならない。

したがって、原告の被告婦人会に対する本件除名処分の無効確認の訴えは、確認の対象となるべき適格を欠く訴えとして却下を免れない。

3  しかしながら、本件除名処分の適否が原告の被告らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の当否を判断する前提問題となっている場合には、裁判所は、右請求権の当否を判断する見地から本件除名処分の適否について審理、判断しなければならないが、被告婦人会の内部関係に関する事項については、原則として、被告婦人会の団体内部の自律権を尊重すべく、その自律権によって決定すべき事項については、実体的な審理、判断を施すべきものではなく、被告婦人会の自律権を侵さない限り、被告婦人会の内部問題につき審理、判断することができるし、また、そうしなければならないと解される。これを本件についてみると、本件除名処分に関する争点は、規約上の除名事由たる「常任委員が本会の名誉をきづつけた場合」に該当する所為を原告がなしたかという実体上の問題と本件除名処分につき常任委員会の審議を経たかどうかの手続上の問題に関するものであり、実体上の問題は被告婦人会の団体内部でその自律権によって決定すべき事項であるが、手続上の問題は何ら被告婦人会の自律権を侵すものとは考えられないので、本件除名処分の手続面につき審理、判断することができるといわねばならない。

四  そこで、被告婦人会がなした本件除名処分につき手続上の瑕疵があるかどうかについて判断するに、《証拠省略》によれば、被告婦人会の規約附則第四条には「常任委員が本会の名誉をきづつけた場合には、常任委員会の協議の上除名する。」と規定していることが認められるが、本件除名処分に関する常任委員会の協議の経緯については、《証拠省略》によれば、次の事実が認められる。

1  原告が会長である北区婦人会は、昭和五七年三月二六日に被告婦人会を脱退し、原告は、その会長として、同年七月八日になって、本件挨拶状を各学区婦人会々長、各行政区々長宛に配布し、本件挨拶状の中で、被告婦人会の主張1(二)(2)のアないしエ記載の各事実を指摘した(右脱退、本件挨拶状の配布の事実は当事者間に争いがない。)。

2  被告婦人会は、同年一〇月一日、北区婦人会の復帰を認めたものの(この事実は当事者間に争いがない。)、原告については一定の制裁処分が必要であることが確認され、当面その処遇については被告婦人会々長の被告加藤預りとすることが決定され、このことは、同年一〇月一六日開催の臨時常任委員会において、被告加藤から原告に伝え、原告の昭和五九年三月末日の常任委員任期満了まで原告が反省するかどうかを見守ることとした。

3  被告婦人会では昭和五九年三月の役員改選期を前にして原告の除名処分をしようとしたが、その直前の同年二月二五日、前北区長冨部修から、原告は自発的に北区婦人会々長就任を辞退するから少し待って欲しい旨の申入れを受けたので、除名処分を見合せていた。

4  しかるに、原告は、新年度に入って北区婦人会々長に再任されるや、自らの会長就任辞退の意思を翻した。

そこで、被告婦人会は、同年五月一日以降開催の常任委員会の席上、北区婦人会選出の委任委員に対し新たな会長の選出方を要望していたが、その実現をみないので、同年一一月三〇日開催の常任委員会において、原告の常任委員を除名する旨の議案が提出され、審議の上、委員定数合計三三名のうち半数を超える出席委員数二七名全員の賛成による承認可決を経て、本件除名処分をなした。

以上の事実が認められ(る。)《証拠判断省略》

右認定事実によれば、本件除名処分は、規約に基づく常任委員会の協議の上なされたものであることが認められ、他に本件除名処分の効力を妨げるような手続上の瑕疵を認めるに足りる証拠はない。

したがって、本件除名処分は有効になされたというほかない。

五  《当事者》によれば、被告婦人会は、その目的の達成のための施策及事業の実施にあたっては、傘下の各行政区地域連合婦人会ひいてはその所属学区地域婦人会のほか、他の社会的諸団体、各行政区の各種機関との協力提携を必要とするのであって、これら諸団体、各種機関に対しては、二年毎の改選期には常任委員の氏名を通知していたこともあり、被告加藤は、被告婦人会々長として会長名をもって、各婦人会のほか、原告主張の外部団体を含め北区各種団体機関の代表者等合計二九名に対して、本件文書を配布したことが認められ、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。

六  前記三ないし五に認定した事実関係のもとにおいては、被告加藤のなした本件文書の配布行為が違法性を有するとはいえず、不法行為を構成するものとは認定することができない。したがって、被告婦人会も不法行為による損害賠償の責任を負うに由ないといわねばならない。

そうすると、原告の被告らに対する不法行為による損害賠償請求は、その余の点に判断するまでもなく失当として棄却すべきである。

七  よって、原告の本訴請求は、被告婦人会に対する本件除名処分の無効確認の訴えを不適法として却下し、被告婦人会に対するその余の請求及び被告加藤に対する請求はいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 鐘尾影文)

<以下省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例